第一部 信仰論 | 星加弘文 |
筆者のキリスト教体験を通じてキリスト教の倫理観が考察されます。
キリスト教の道徳にはご利益的な側面があり、筆者はこれに疑問を感じてカント倫理学との比較を試みます。日本には多くのご利益宗教がありますが、キリスト教もそれと同じものなのでしょうか。
当章の主題は「倫理と信仰」ですが、「第一部 信仰論」の中での当章の役割は、キリスト教信仰が歴史事実と無関係に成立する信仰ではない「事実依拠的信仰」であることを確認することによって、「史実と信仰」問題における「史実のイエスを知りえるかどうかは重要ではない」と主張する啓蒙主義的見解(Essay 4)を退けるところにあります。
キリスト教信仰が成立するためには史実のイエスを知る必要があるという理解を保つことが、「史実と信仰」問題への取り組みの第一歩となります。
全8編の論文中、字数は最も少ないですが難易度はやや高めです。
読解難易度★★★☆☆ 文字数 21,000字