第二部 信仰と理性論 | 星加弘文 |
20世紀保守キリスト教の哲学思想の一つである「対立の原理」への批判を通じて、信仰者における信仰と理性の境界、および非信仰者における信仰と理性の境界を探求し、両者が原理的に共有しうる領域の有無について考えます。
A.カイパーに発する「対立の原理」という考えは、当初、穏健な思想でしたが、後にV.ティル、H.ドーイウェールトらによって急進的な教義的純化が行われました。
それによってこの思想は宗教改革者カルヴァンの教えにより適うものへと発展したとされるのですが、しかし未熟な思想の純化は、思想と、世界の実際との乖離をさらに大きなものとしてしまいます。
これらの思想は信仰と理性の関係を正しく捉えたでしょうか。そこには、20世紀前半の認識論にエポック的役割を果たしたN.R.ハンソンの「観察の理論負荷性」や、W.V.O.クワインの「ホーリズム」という考えの無批判な採用が認められますが、信仰と理性、信仰者と未信仰者の関係を扱う方法として、それは適正だったのでしょうか。
当論考では、キリスト教保守主義から提出されたオランダ改革派神学の思想を検討し、その問題点を明らかにしながら哲学と神学の境界を考察します。
読解難易度★★★★☆ 文字数 43,000字