第二部 信仰と理性論 星加弘文

Chapter 1 「信仰と理性論」の方法論

Contents

Section 1 何が何を語るのか        
Section 2 信仰を理性で語るべきことの一般的な理由
Section 3 信仰を理性で語るべきことの必然性 理論前件への要請
Section 4 主題についての必然性 理論後件への要請
Break 落合仁司著『数理神学を学ぶ人のために』と当論考の関係について
Notes             

Summary

信仰と理性の関係を論じるための方法論が考察されます。

信仰と理性を主題とする叙述のあり方には二通りが考えられます。

一つは、一般的な通常のことばで述べることができる範囲においてこの主題を扱おうとするもので、もう一つはキリスト教信仰で受容されている神、聖霊、創造、贖いなどの聖書的概念を用いつつ、キリスト教的観点からこの主題を説き明かそうとする方法です。

前者には論述範囲の限界があり、後者には論述の理解しがたさがつきまといます。

信仰と理性論ではいずれの方法を採用すべきなのでしょうか。

また、信仰と理性の関係を論じようとする場合、主題の設定そのものにも注意を払う必要があります。議論対象となる信仰および理性は、それが当初から持つ性質が保たれたままで論じられなければなりません。

哲学的立場から語られる「信仰と理性」論では信仰が理性寄りに変容され、キリスト教的立場から語られる「信仰と理性」論では理性が信仰寄りに変容されるということが繰り返し行われてきました。それは信仰と理性の折り合いをつけるための方策です。しかしそれではユダヤ的背景を持つキリスト教信仰と、ギリシャ的背景を持つ一般的な理性の関わりを扱うことにはなりません。

当論考では「どのような概念によって主題を扱うべきか」、また「述べられる側の概念はどうあらねばならないか」という、キリスト教哲学に対する「要請」について検討します。

当章の終わりでは、落合仁司著『数理神学を学ぶ人のために』に認められるカント哲学克服のための新たな方法の可能性について、当論考が採用する方針への反省を含めた検討が行われます。

読解難易度★★★☆☆ 文字数 24,000字