第二部 信仰と理性論 | 星加弘文 |
『純粋理性批判』は大冊であり、聖書と同様、読み方そのものが解釈問題となる書物である。
私は『純粋理性批判』前半の「超越論的分析論」までを、Chapter 2 - Easy Study 6 に述べた「構成主義」による論述、後半の「超越論的弁証論」を、同じく「実在論」による論述として読むことで整合的な理解が得られると考えている。
この見方は「超越論的弁証論 第三アンチノミー」の考察(Section 8 )から得たものだが、単にこれだけの視点を持つことで、「超越論的」「対象」「現象」「物自体」などの『純粋理性批判』の独自概念相互の関係だけではなく、「現象」と「物自体」の関係論そのものである「触発論」についても、かなりの程度の整合的理解が可能となる。
第二版序文
「現象と物自体」という『純粋理性批判』の中心思想の構想が示される。
「我々の批判は、客観を二通りの意味に解することを教える、即ち第一には現象としての客観であり、また第二には物自体としての客観である。」(BXXVII)
緒言
『純粋理性批判』の考察の開始点が述べられる。
認識の経験的源泉
「我々の認識がすべて経験をもって始まるということについては、いささかの疑いも存しない。我々の認識能力が、対象によって喚びさまされて初めてその活動を始めるのでないとしたら、認識能力はいったい何によってはたらき出すのだろうか。」(B1)
認識の主観的源泉
「しかし、我々の認識がすべて経験をもって始まるにしても、そうだからといって我々の認識が必ずしもすべて経験から生じるのではない。」(B1)
対象に対する「現象と物自体」という超越論的見方は、経験と主観を認識の源泉として設定することから帰結する。超越論的思惟が何から始まっているかを確認しておくことは「超越論」という概念の理解において重要である。カントの思考の出発点は経験と主観という内在事象に置かれている。
超越論的感性論と超越論的分析論
「現象と物自体」のうち、「現象」としての客観を、主観において「構成」する試み。空間、時間、カテゴリーは「形而上学的演繹」などによって証明すなわち肯定され、それらの主観機能を理論前件、「現象」を理論後件として、前件から後件を導出する前件肯定式型の構成主義的方法(Chapter 2 - Easy study 2-1)が全編を通じて実行される。(「超越論的解明」と「超越論的演繹」は、それ自体は『純粋理性批判』の道具立てを仮定とする後件肯定式論証だが、超越論的感性論と超越論的分析論ではその結論を理論前件として用いている。)
超越論的弁証論
対象を「現象と物自体」としてみる見方をアンチノミー問題に適用し、その解決を示すことで、その超越論的見方の正しいことを示す弁証論。「客観を二通りの意味に解する」ことを仮定、すなわち理論前件とし、それによって旧来のアンチノミー命題が整合命題として導かれること示すことで後件が肯定されるという、後件肯定式型の実在論的方法(Chapter 2 - Easy study 3)による議論が展開される。