第二部 信仰と理性論 星加弘文

Chapter 2   信仰と理性の多対多関係 (31)

(注)

■Hard study 5-5-3

[13] 【直積】例:テーブルAが2列3行のデータ、Bが3列5行のデータからなるとき、2つのテーブルを横に結合して5列15行のテーブルを作る操作。当節で使用するMicrosoft Access®では結合線を設定しないクエリによって行う。
  【内部結合】直積を行った後、A、Bの共通列の値が同じであるものを抽出する操作。Accessでは矢印のない結合線を設定して行う。共通列の値がそれぞれ一意であるテーブルでは、AテーブルとBテーブル間の共通列の項目値の一致と、直積テーブルでの共通列の項目値の一致には違いがないので、内部結合について「2つのテーブルに共通しているデータを取り出す」という一般に普及している理解でよい。しかし一対多や多対多の関係にあるテーブルでは、内部結合が「直積を経由した操作」であることを理解していないと結合結果を理解できないか、あるいは結合の結果と結合の意図が一致しないということが起こる。
  【外部結合】内部結合を行った後、内部結合から漏れたデータをA、Bいずれかの側から採用する操作。Accessでは矢印付の結合線を設定する。共通列の値が一意であるテーブルでは、外部結合を「2つのテーブルのうちいずれかを主テーブルとみなし、他方のテーブルから主テーブルのデータと合致するデータを主テーブル側に引用する」というMicrosoft Excel®のVlookup関数等と同じ操作として理解してよいが、一対多、多対多関係のテーブルの外部結合では「外部結合の動作前に内部結合が直積データにおける項目値の一致において働いている」という理解が必要。つまり外部結合の動作も直積が基礎になっている。

[13.5] ¬¬¬P⊃¬Pの以下の証明は、野矢茂樹『論理学』問題80解答(p.243-244)を参考にしたものである。まず、背理法により ¬¬¬P⊃¬P が妥当式でないと仮定する。
すなわち、ある認識史のある知識状態αにおいて
ᬬ¬P⊃¬P 
①のときᬬ¬P ② でありかつ α¬P
すなわち、①式は⊃の性質により、前件が真で、後件は偽のはずである。
②のときⅡ(5)(イ)より、αRβのすべてのβで ⬬P
④のときⅡ(5)(ロ)より、βRγなるあるγで γ¬P
⑤のγをⅠ(1)(Rの反射性)によりβ、αで例化(特定の期に還元する)してα¬P
⑥と③が矛盾。したがって①は誤り。したがってᬬ¬P⊃¬P
(意味論の読み替えⅡ(5)(イ)(ロ)は Hard study 5-2-2 参照。野矢茂樹『論理学』では意味論内のP,Qは原子式となっているので、分子式¬¬¬Pへの適用はできないことになるが、『論理学』の元本である(論理学』p.252にその旨の記載)大出晁『自然な推論のための論理学』勁草書房 1991 p.75)の意味論では、記号A,Bが「任意の論理式」となっているので、②、④への適用は問題ないと判断する。なお、¬¬¬P≡¬Pの証明には、¬P⊃¬¬¬Pの証明も必要だが、直観主義論理で三重否定が一重否定になることについては上の証明だけあればよいので省略。)
※以下は、証明表を用いた確認
Hard study 5-2-4で作成した「¬¬Pの証明表」に、「Pの証明値」から「¬Pの証明値」への操作を加えて「¬¬¬Pの証明表」を作成する。

直観主義論理¬P、¬¬P、¬¬¬Pの証明表

¬Pの証明値」と「¬¬¬Pの証明値」が同値であることが確認できる。したがって¬¬¬P⊃¬P。また、¬¬P以降の¬の付加では、¬Pの証明値と¬¬Pの証明値の繰り返しとなっていくことも分かる。

[13.6] ウィキペディア日本語版「直観主義論理」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B4%E8%A6%B3%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E8%AB%96%E7%90%86 「ハイティング代数意味論は直観主義論理の"無限多値論理"としての解釈の一種と見られる。」(2017年7月時点)

[14] 試みに、この理解に基づいて認識史01と認識史00の記号を別にして、それらの演算規則をいくらか変更した証明表を作成してみたが、ド・モルガン律(2)aの結果は型と同じである。

[14.5] ¬Aの¬が否のとき、すなわち「登らなかった」であるとき、認識史00のAについてα、~βは「登ったのを見なかった、が最終期まで続いた」であり、このの2連は直観主義論理意味論の(ハ)「命題の肯定が最後まで証明されないとき頭初期で否定が証明されている」に相当し、「否定」を意味する。したがって¬の「否」と相殺される。
¬Aの¬が不証明のとき、認識史00のAについてα、~βは「不証明」の意味となる。
したがって¬Aの¬と認識史00のは連動している、すなわち¬の偽値が決まると、それによっての偽値も同期すると解する。

¬A証明表と直観主義論理4言明

[15] 注[14]の結果から、認識史01と認識史00の不証明記号を別のものにしても、それによる証明表での効果がないことが明らかであり、また認識史01は、それが認識史00と分離していることによってその機能を果たしているので認識史01の不証明記号を新たに作る必要はなく、逆に認識史00で使われる記号と重なっていても支障はない。不証明記号を無闇に増やさないためにも、認識史01での直観主義論理的「未証明」と 認識史00での三値論理的「不明」は同じ記号とするのがよいと考える。

[16] ここでは、前件と後件の同じ認識史で├だけの行が├だけの行と、├/だけの行が├/だけの行と対応しているため、├を含む行と、すべてが├/である行を一度の外部結合で操作できるため、認識史行を分ける作業を省略している。No.4 (A⊃B)⊃(¬A∨B)では├と├/を分けた操作が必要になる。